「占いの話」カテゴリーアーカイブ

二千年も変わることがない思想体系

暦であり方位である十干十二支に意味付けを行った陰陽五行説。

それら五行(五気とも言います)は互いに関係し、自ら他のものを生み出し、あるいは自らが他から生じ、自ら他を剋し、あるいは剋されることで循環が得られ、森羅万象の永続性が保たれるというわけです。

改めて、陰陽五行説を書いていくと東洋思想らしい自然界を基調とした全体的な世界観を持っていて完成された学問であることに気づかされます。

西洋や古代インドでも陰陽五行説と同じように二元論を盛んに確立させる動きはありましたが、陰陽五行説ほど体系だった学問は存在しません。

古代インドでは自我と非自我、意識と無意識を退治させたアートマンとブラフマンの二元論が起こりましたが、やがてアートマン=ブラフマンという梵我一如の理論から一元論に戻っています。 続きを読む 二千年も変わることがない思想体系

日本で独自に発達した鬼門

陰陽五行説が元になった干支の話、少しばかり難しかったので日本に伝わる干支のエピソードからいくつか拾って紹介しましょう。

陰陽五行説が日本に渡ってきたのは5~6世紀と言われ、日本独自の発展を遂げて陰陽道という学問に発達しました。

したがって陰陽五行説にはない、日本だけの風習がいくつかあります。

そのひとつが鬼門。

艮(うしとら)の方角である北東は鬼が出入りするとされ、忌むべき方角と言われています。

またその正反対、南西の坤(ひつじさる)は裏鬼門として艮同様に嫌われています。 続きを読む 日本で独自に発達した鬼門

黒澤映画に登場する鬼門の人物

日本の陰陽道が生み出した鬼門は北東の艮(うしとら)方向ですが、この方向を物語に登場させた有名な映画がありました。

黒澤明監督のもっとも脂が乗っていた時代の作品、「用心棒」です。

からっ風の吹く寂れた上州の宿場町に、桑畑三十郎と名乗る浪人がふらりと現れます。

その浪人が宿場の居酒屋主人、権爺から聞いた話によると、ふたつのヤクザ組織が対立して利権争いをしているため、宿場はすっかり寂れたとのこと。

そこで浪人、両方の組織に自分を用心棒として巧みに売り込み、やがて2つの組織を壊滅させるという痛快時代劇でした。 続きを読む 黒澤映画に登場する鬼門の人物

八百屋お七と丙午の女 PART-1

陰陽道から生まれた日本独自の風習は鬼門以外にもあります。

丙午(ひのえうま)の女。

これ、聞いたことありますか?

元になったのは江戸時代、八百屋の娘であるお七の物語です。

お七は江戸を襲った天和の大火に巻き込まれ、家を失って家族と一緒に正仙院という寺で避難生活を送ります。

このお寺にいた小姓生田庄之助と恋仲に落ちるお七、やがて店が立て直されて寺を引き取るものの、庄之助への恋心は募るばかり。 続きを読む 八百屋お七と丙午の女 PART-1

八百屋お七と丙午の女 PART-2

井原西鶴の脚色によって後世に語られるまでになった悲劇の娘、恋人に会いたい一心で放火し、火あぶりの刑に処せられた八百屋のお七という少女、生年月日は定かでないのに、なぜか1666年生まれ、と決めつけられてしまいました。

この1666年、丙午(ひのえうま)の年となっています。

十干で丙(ひのえ)は文字通り、火の兄で陽干、十二支で午は南の方角を指し、夏の太陽や炎が燃え上がる火の陽支の表現を持っています。

火の陽が重なっているだけに、陰陽五行説では比和(同じ行が重なると良い方向にも悪い方向にも加速する)となり、この年に生まれたから八百屋お七は放火という大罪を犯した、という俗説が生まれてしまいました。

この俗説、笑い事ではなく、その後の日本で丙午に生まれた女性は気性が強く夫の命まで縮めるという迷信にまで広がっていきます。 続きを読む 八百屋お七と丙午の女 PART-2

お七伝承に欠けている重要な謎

井原西鶴によって恋のために放火した悲劇の少女となり、近世江都著聞集で気性が激しく夫を短命にさせる丙午(ひのえうま)の女にさせられてしまった八百屋お七ですが、じつは火あぶりの処刑から逆算すると1666年生まれではなく、1668年生まれだったのではないか、という説があります。

そうすると丙午ではなくその2年後、戊申(つちのえさる)生まれとなり、火の象徴、さらに陽の干はどこにもないことになってしまいます。

そこで疑問に思うのが恋仲と言われた庄之助。

井原西鶴の「恋草からげし八百屋物語」では吉三郎の名前ですね。

この男の生年月日は明らかにされていません。

陰陽五行説における干支は二元論であり、相互作用によって結果が生じます。 続きを読む お七伝承に欠けている重要な謎

運命を変えることもできるポジティブな方法論

江戸時代の悲劇の少女、八百屋お七が仮に丙午の女だったとしても、恋仲の庄之助が8歳年上だったら悲劇は起こらなかったかもしれません。

8歳年上だと戊戌となり、戊は土の陽干、戌も土で比和となり、丙午とは火生土となって相手を生み出していく陽の関係になれたはずです。

これこそ、陰陽五行説の優れた点ですね。

自分に定められた気(行)を変えることはできなくても、相関関係を選ぶことによって自分の運命をどのようにでも変えられることができる、それこそ陰陽五行説の要です。

たとえ相手との相性が相剋の関係であっても、陰陽五行説における十干十二支には方位と時間があり、そこに関係を改善する相生や比和、相侮、相乗があります。 続きを読む 運命を変えることもできるポジティブな方法論

十干の性格判断 PART-1

干支、じつは毎日の生活のなかで行動の方向性を決める要素を多分に含んでいる方法論ですが、これまで概念的な話が多く、実践的、あるいは具体的な方法論が出てきていません。

十干十二支による方法論の実践は各々によって方向性が変わるので具体案は自分で見つけなければなりませんが、それでは不親切すぎるし、面白味もありませんね。

たまには、ふんふん、そうなんだ?的、軽い話題があってもいいので、ここで十干による性格判断なるものをご紹介しましょう。

言ってみれば十干は陰陽五行説が反映する基本ですから、この性格判断を十二支や十干十二支と合わせた方位、時間にも応用してください。

では最初に甲(きのえ)。 続きを読む 十干の性格判断 PART-1

十干の性格判断 PART-2

乙(きのと)は木の陰干で草木花を表しています。

性格は繊細で温和、地面に根を張るがごとく人脈を持ち、和を大切にする人です。

反面、春の息吹を内包しているように快活ではあるけれど優柔不断で依存心が強い部分を持っています。

未や丑といった柔らかい土の作用を持つ支、亥のように雨や池を意味する水の作用を持つ支を必要とします。

丙(ひのえ)は火の陽干で、太陽の灼熱のように強い光と熱を表しています。

八百屋お七でお馴染みの丙の人は情熱的で華やか、派手な一面と好奇心の強さを持っています。 続きを読む 十干の性格判断 PART-2

十干の性格判断 PART-3

戊(つちのえ)土の陽干で固い土や大きな山を意味しています。

大きなことを好み、野心家であると同時に責任感も持っています。

包容力があって世話好きですが、反面、大地のように固く頑固で、山の天気のように気分屋の一面も持っています。

小さなことにこだわらず、どっしりとした山岳のような安定感を持っていることが大きな特徴です。

山は豊穣の証でもあるため、必要なのは太陽の光の作用を持つ午、雨の作用を持つ亥を支にすると強力になりますが、巳のように灯した炎は山を焼き尽くして滅ぼす危険性を持っています。

己(つちのと)は土の陰干で、柔らかい土を表現しています。 続きを読む 十干の性格判断 PART-3

十干の性格判断 PART-4

庚(かのえ)は金の陽干で、加工される前の剛金を意味しています。

鉄のように強く、十干のなかでもっとも剛健な陽干と言われています。

それだけに道理を重んじて負けず嫌い、潜在的能力は高いけれど軽率なところや傷つきやすい部分を持っているので鍛錬を必要とします。

庚は更につながるので変革を好むという一面も持っており、自らを変革させる巳、灯した炎を味方につけると強い存在になります。

辛(かのと)は金の陰干で、加工した金属を表します。

辛は新に通ずることからつねに成長を求めて自ら改革を行うという前進的な部分を持つ反面、陰干のため、自らを成長させるもの以外、たとえば巳のように形を変えてしまう支とは反目します。 続きを読む 十干の性格判断 PART-4

干支を利用して活路を開く

最後は癸(みずのと)、水の陰干で、雨や梅雨といった柔らかい水を表現しています。

水のなかでも形を変えることに長けているので状況に対する適応能力が高く、真面目で勤勉、周囲に対しても気配りのできる性格を持っています。

反面、潔癖症で純粋な部分を持っており、少しのことでナーバスになることもあります。

癸は柔らかい水ですが、耐えやすいという欠点があります。そのため、水源として申や酉などがあれば水は伏流水となり、大木の作用を持つ寅がいれば水量の調整を行うことができます。

以上、十干の性格判断でした。

意外と当たっている部分があるでしょう? 続きを読む 干支を利用して活路を開く