環境が人間心理に多大な影響を与えていることは、誰もが直観的に感じるのではないでしょうか。ですから風水術を別の言葉で表現するなれば、『環境心理学』ともいえるかもしれません。例えば、制服を着た人を見たり接したりすると、多くの人は制服を着た人にそれなりのイメージを持ち、反応します。
制服を見て、職業や人となりを無意識のうちに判断します。逆に、制服を着ている人は制服着用時と普段着の時では気分が違うのです。医師や弁護士、警察官のような職業の人でなくても、ファーストフードのアルバイトさんであっても、普段とちょっと違う布着れを身につけただけで、あるいは名の知れた会社のサラリーマンが社員バッジなんていうものをつけただけで気持ち心持が変るのです。
風呂敷をまとった子供が月光仮面の心持ちになるようなものです。布きれよりもっと多くの刺激を受ける、環境というものに人間心理が容易に左右されるということが理解できるのではないでしょうか。
以前、●ンリン社のアルバイトで住宅地図の現地調査をしているときのことです。必要に応じて聞き込み調査をすることがあったのですが、そのとき私が体験したことは、なんだか暗ーい雰囲気で掃除もあまりしていない玄関に履物が散らばっているそんなお宅からはやはり暗ーい感じの奥さんやダンナがぬーっとお出てきたり、玄関がキレイで明るくさわやかなお家では、そんなイメージの奥様が上品にお出ましになったりして、住むお家によって住む人も変ってくるのだなぁとつくづく実感したものです。
住む環境による人間心理への影響がどれだけ多大なものであるか、極端に考えてみればわかります。その環境の要素として、寒暖、乾湿、臭い、騒音、空間、色彩、採光、などがありますが、たとえば、天井が極端に低くて150cmくらいしかないしかも三角部屋、あるいは一畳敷きくらいの広さしかない部屋でしかも床が10度傾いているよなうなお家を考えてみてください。考えるだけで窮屈になるはずで、やむを得ず住まなくなければならないとしたら、お家に帰るたび憂鬱な気分になるのではないでしょうか。
こんな家があるはずかない極端なハナシだと笑い飛ばす人もいるでしょうけれど、まとも?なお家に住んでいる人でも実は無意識のうちに住まいから多大な影響を受けているものなのです。床が少し傾いているだけでも、部屋の形少しでもいびつであったり(90度でない)垂直、鉛直がわずかに狂っていても人間のセンサーは敏感にキャッチするものなのです。
換気が悪くて空気が淀んでいるとか、日当たりが悪い、湿気が多くてカビ臭いとか、隣近所からの生活音うるさいとか、誰もがわかるような悪環境であれば、風水を持ち出すまでもなく改善しようと努めるでしょう。しかし、風水術では物理的センサーではキャッチできない「気」というものの影響を考慮しているところが、建築学とはまた別物なのです。