卜宅、つまり風水とは別に中国では春秋戦国時代頃から森羅万象の成り立ちを説く陰陽思想が生まれています。
紀元前770年頃から紀元前221年頃までの時代ですね。
日本でも古事記や日本書紀には世界の始まりが大地と海と空が混濁(大地はまだ柔らかく水に浮く脂のように、クラゲのように漂っていた)した状態と記されていたし、ギリシア神話でも混沌が初期世界であったように、陰陽思想もすべては混沌の中から陽の気が生まれて天になり、陰の気が沈んで大地になった、というところから始まります。
古来、世界の始まりに対する考え方は同時多発的です。
陰陽思想が西洋の宗教観と異なるのは神を善にするために悪を存在させるという善悪二元説ではなく、陰と陽は互いにバランスを取り合うために必要であるという考えを持っていること。
陽の中に陰があり、陰の中に陽があるから、互いのバランスが崩れると世界の調和が乱れるという法則が働いています。
この陰陽思想、春秋戦国時代に始まっていますが、実在する思想家ではなく中国神話に登場する伏犠(ふっき:ふくぎとも呼ばれる)が説いた思想と言われています。
神話の世界はその国を支配下に収めた者によって編纂されるのが常ですが、中国神話においては統一見解がなく、世界の始まりにはさまざまな神話が並列しています。
しかもその後に長く伝わる思想が実在する人物ではなく神話からの伝承というのも珍しいパターンといえます。