奈良時代から平安時代にかけて宮中に仕えた和気清麻呂という人物がいました。
当時法王だった道鏡は、策略を巡らせて天皇の座に就こうとしました。
道鏡は『道鏡を天皇にすべき』と神のお告げを聞いたと言えば大臣にしてやる、と清麻呂に言いました。
しかし、清麻呂はその買収には屈せず、本当の神のお告げを報告したのです。
『道鏡を追放しなさい』と。
清麻呂はそう素直に告げると、道鏡の怒りを買い鹿児島に流罪になりました。
鹿児島へ向かう途中、道鏡の刺客に襲われ、一命を取り留めましたが、足を負傷してしまいます。
歩くのもままならない中、皇室の安泰を守られたことを感謝しようと宇佐八幡に向かいました。
するとどこからともなくイノシシが300頭現れたのです。
イノシシは宇佐八幡まで清麻呂を護り案内すると、どこかに去っていきました。
そしてイノシシの力か、清麻呂の足は治ったのです。
清麻呂はその後、鹿児島でも治水事業など功績を残し、道鏡が失脚すると再び都に戻り、世のため国のために尽力しました。
その実直で清廉潔白な人柄は、人々に愛され、京都の護王神社には和気清麻呂が主祭神として祀られています。
また、ここの神社には清麻呂と共にイノシシも祀られ、怪我や足腰などの健康にご利益があると言われ、プロのスポーツ選手も多く訪れるそうです。
ちなみに、和気清麻呂は1800年代に十円札の紙幣になっていますが、イノシシも清麻呂と共に紙幣に登場しています。
さすがに300匹は描かれていません。
しかし表には和気清麻呂と護王神社、裏には真ん中に躍動感のある、走っているイノシシが大きく一匹描かれているのです。
そのため、この十円札は『イノシシ』と呼ばれていたそうです。