昔、天竺でウサギとキツネとサルが仏教の修行に励んでいました。
そこに貧しい老人が現れ、養ってくれる家族も食べ物もない、と言いました。
サルは木の実をとったり、里で人々の果物などを持ってきて与えました。
キツネは川で魚をとったり、お墓のお供え物をとってきて与えました。
サルとキツネはそれらで食事の準備をしました。
一方、ウサギは方々探しましたが、老人に与えられるものは見つかりません。
手ぶらで帰ってきたウサギを、サルやキツネ、老人までもが嘲笑しました。
ウサギは言いました。
『確かに私には食べ物を持って来ませんでした。ですからこの身を焼いてお食べください』
そう言い終わるやいなや、ウサギは火の中に飛び込みました。
すると老人はその姿を変えました。
その老人は帝釈天だったのです。
そして全ての生き物たちにその善行を見せるために、月の中にウサギを移したのです。
月にウサギの姿と煙があるのはそのためなのだそうです。
全ての生き物が月を見る度に、ウサギの善行を思い出すように。
これは今昔物語に載っている逸話です。
ウサギが捨身慈悲、滅私献身の象徴として描かれているのです。
月にウサギがいるのはそういう理由があったのですね。
今度からウサギを見る目が変わりそうです。