「邯鄲の枕」は唐時代の作家、沈既済(しんきせい)の作品です。

粟は黄粱とも呼ばれるので粟粥が煮えるまでの時間という意味から「黄粱の一炊」や「一炊の夢」などという言葉も、栄枯盛衰の一瞬を表す同義語として使われています。

このように壮大で長時間に渡る物語を一瞬(粟粥ができるまで)で見る夢を瞬間形成説と呼んでおり、人生とまではいかなくても1ヶ月間、1週間といった単位の夢を見ることはよくあることです。

莊子が胡蝶になった夢でも、現在、自分が胡蝶で莊子になっている夢を見ているのだとしたら、その時間はとても長く、誰かが起こしてくれるか、死ぬまで続くわけですね。

夢には時間的観念がない、という説もありますが、夢の物語に時間的概念がある以上、時間は存在し、それが長短に変化するだけのことなので、観念がないという説は当てはまりません。

夢における時間的概念も、今後における夢と脳科学が解明していくテーマになっていくでしょう。

さて、この物語は禁じ手となっている夢オチの原点であり、古典ですね。

夢オチは作者が煮詰まった時の、あるいは不評のための連載中止になる時の最終手段と言われています。

しかし、これほど壮大な夢オチで、しかもオチることにテーマを見出しているのであれば許される手法といえます。

夢オチの中にも、傑作はあるのです。

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