筒井康隆氏の「パプリカ」は1993年に出版されたサイコ・SF小説です。
パプリカとは、精神医学研究所に努める優秀なPT(サイコセラピー)治療者、千葉敦子のもうひとつの顔となっている夢探偵の愛称です。
小説では西進医学研究所の派閥争いから、千葉敦子と同僚の時田浩作が開発した他人と夢を共用できるデバイス、DCミニが盗まれ、それを奪い返すために夢の中でパプリカが活躍するという物語。
エンターテイメントのように思われますが、随所に筒井氏のブラッキーな部分と不条理な部分が交差しており、読み進むうちに得体の知れない不安感が襲ってきます。
とくにDCミニを装着した時の快感と、そのDCミニを悪用して他人の人格を崩壊させたり、夢から抜け出せなくさせてしまったり、といった部分を読むと、ちょっと夢を見るのも怖くなりそうな気分です。
後半部分は夢の中のアクションなので筒井氏のまったくの想像の世界ですが、前半はむしろ精神治療を分かりやすく描いているので、夢分析についても詳しくなれるでしょう。
なお、この小説はアニメとして映画化され、アメリカでは1億円を突破する興行成績を上げています。
監督の今敏さんは本作品を最後に、2010年に亡くなられました。
残念です。