前項では夢分析の簡単な例を上げましたが、実際はこれほど簡単なことではありません。
とくにユングの精神分析学はコミュニケーションによって夢の内容を広げていきながら無意識のメッセージを探る拡充法を用いるため、問題の収束までは慎重かつ時間がかかります。
しかし結末が見えてくるに従い、本人の気がつかないところの原因が分かってきて、治療がうまくいった際は心の中のモヤがすっかり晴れた気分になることもあります。
また悩みを意識できない場合の治療にも有効的です。
やたらと暴力的な子供の夢判断を行ったら、厳格な父親に反抗できないことの表れであったり、女性とうまくつきあうことができない男性の夢判断では理想の女性が母親であったり、といった個人が無意識に抑えこもうとしている感情が夢分析によって明らかになります。
必ずしも夢分析が深層部分の原因を探ることはできませんが、すくなくとも精神的悩みの原因が記憶に残っている場合には治療によって解決する可能性が高くなります。
日本では精神科というと、それだけで拒否反応を起こす人もいますが、精神分析学や分析心理学はカウンセリングという名目で開業していることが多いので、自分で解決できない精神的な悩みを持っている人は、一度、信頼できるカウンセラーと相談することをお勧めします。