稀に、ABO式血液型で2タイプを持った人がいます。異質なものの合成を意味するギリシア神話の伝説生物、キマイラに由来したキメラという生物学的用語があり、これを2タイプの血液型を持つ人に当てはめ、ヒトキメラと呼ばれます。
双子に多く見られる現象で、双生児の胚は胎盤における血液供給を共有することが珍しくありません。
その際、血液幹細胞がもう一方の胚へ移動し、骨髄に定着すると持続的に血液細胞を供給するようになり、2タイプの血液が作られるようになります。
2タイプの血液を供給する血液細胞は胚の段階でしか作られず、成体になると血液キメラを作ることができません。
ただし、成人になってから血液型が変わることはあります。
それは骨髄移植を受けた場合。
骨髄移植はABO式血液型が異なっても手術が可能です。
そのため、血液型が違ったドナーから骨髄移植を受けると移植された造血幹細胞で作られる血液型がドナー・ドミナント(移植した器官が優先されるという意味)によって以前の血液型よりも優先されるので、血液型が変わるわけです。
前述した松岡圭祐氏の小説「ブラッドタイプ」は、この骨髄移植によって血液型が変わる女性を主人公の1人に置いていました。
もちろん骨髄移植して血液型が変わったとしても、性格まで変わるわけでないことは小説を読まずとも分かることですね。