「壊れにくい」というメリットをヨーロッパ車が参考にしたのは日本車に取って画期的なことで、日本車をヨーロッパメーカーが認めたことでもあります(北米メーカーは70年代後半から小型の日本車を参考にしてダウンサイジングを図っていましたが)。
車に関しては後進国である日本が、それまでヨーロッパの車作りを参考にしてきただけにようやく肩を並べるところまで追いついた、ということでしょうか。
ところで、なぜ日本車は「壊れにくい」という個性を持ったのでしょう。
その背景には、はっきりとした四季と縦長の地形、さらに平野部が少ないという日本独自の風土が深く関わっています。
夏は高温多湿、冬は大降雪もあり、北へ行けば氷点下は当たり前、梅雨もあれば台風も来ます。
同じ季節でも北海道と沖縄ではまったく気候が違い、日本の中心には標高の高い日本アルプスがそびえていますし、関東からのドライブコースはかつて箱根の九十九折が定番でした。
日本列島を隙間なく高速道路が結んだのは最近のことで、80年代までは少し都市部から離れただけで未舗装道路がまだ多く残っており、世界の道路事情よりもはるかに劣悪なものでした。
これらの悪条件のなかで一般庶民がストレスなく車を走らせるためには、イタリア車のようなカンツォーネもフランス車のような猫足も、アウトバーンを爽快に走るドイツ車のエンジンも必要なく、とにかく日本のどこを走っても、いつ走っても、壊れない車が必要だったのです。