■映画「魔女の宅急便」と「黒ネコヤマトの宅急便」について
「魔女の宅急便」という、宮崎駿監督作品の有名なアニメ映画があります。ところで、この映画タイトル中の「宅急便」というのは、ヤマト運輸の登録商標なのです。その一般名称は「宅配便」となります。でも、「魔女の宅配便」とはなりませんでした。
そのことから、(これがヤマト運輸の登録商標と知っている人などから)「商標の侵害にならないのか?」とか、あるいは「この映画には、ヤマト運輸が関わっているのでは?」といった、素朴な疑問が映画の上映当初からあったようです。
映画の中には、まさに「黒猫ヤマトの宅急便」の言葉どおりの「黒猫」も出てきます(たしか、「ジジ」という名前でしたね)。
それで、その真相はと言いますと、実はヤマト運輸はこの映画の製作委員会の中の一つであり、たしかに関わりはあったのです。
という次第で、「宅急便」という、他社の登録商標をうっかり、タイトルにしてしまった、などというわけではありませんので、ご安心を。(※既にこのことをご存知の方にとっては、蛇足でした)
■「正露丸」と「征露丸」というネーミングについて
整腸剤として有名な「正露丸」について、ちょっとしたエピソードを語りましょう。その「せいろがん」というネーミング、読みは同じでも、もともとは「征露丸」と記していました。
それは、字の如く「ロシア(露西亜)を征伐しよう!」という願いが込められていたということです(※)。もちろんのこと、それは日露戦争のときの話し。
この「正露丸」は食あたりなどの常備薬として、兵隊さんから大変重宝されていました。戦時下は衛生状態が悪くなるため、下痢や腹痛が多かったのです。
ただ、戦争が終わって世の中が平和になっても、なお「征露丸」ではまずいだろうということで、その字を「正露丸」としたのだそうです。(※ただし、そのことを裏付ける確かな資料もないといいます)
ところで、「正露丸」で思い出すのがラッパのマーク。これは、大幸薬品の登録商標となっていますが、「正露丸」というネーミングのほうは、昔から広く国民の間で馴染まれ、用いられてきたという経緯から、一社独占とはならず、他社の薬品メーカーにおいても、その名称が使用できるという、特別な名称となっているのです。
つまり、「正露丸」は一般普通名詞とされているので(最高裁判決)、他の薬品メーカーの「正露丸」と区別するためには、こういった商品イメージと直結するマークが必要となるのでしょう。
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