産業財産権(工業所有権)の対象とならない創作(著作物)の場合、それには自動的に著作権が発生すると述べました。しかし、著作権が発生するとはいっても、それで創作の著作者であることが立証されるわけではありません。
これに対して、新しい作品の創作を産業財産権(特許、実用新案、意匠、商標など)として出願する場合には、それ自体が創作の事実として立証されうる「明白な書類」として残ります。
また、その書類は官庁に記録としても残り、多くの人にも後日それが認められるのです。
それが、著作物の場合では、ことさら「著作権」という権利を得るため(独占するため)の、出願などの手続きは設けられてはいないのです。当たり前といえば、当たり前のことですが…。
実は、文化庁の著作権課には、著作権を登録するための書類というのが用意されています。文化庁長官宛に出す「著作権登録申請書」というものです。
ただし、文化庁の著作権登録というのは、「譲渡、質入れなどの登録」「発行(公表)年月日の登録」「実名の登録」などについて、形式審査を行うだけのもので、実質的な審査をするわけではありません。
ここでいう「形式的な審査」というのは、登録の申請書の内容が形式的に整えられているかどうかを審査すること、そして「実質的な審査」とは、申請した者が著作物の真の創作者であるかどうかの審査のことを指しています。
それでも、これを利用すれば、作品を創作した著作者として、少なくともそれを公表した日付などは登録できることになります。これなら、無名の人にとっても、自分が創作したことを証明する、一つの方法とできるでしょう。
ただし、この文化庁への著作権登録(著作物の第一公表年月日の登録)をおこなうには、50通以上の証明等が必要とされているので、この点がちょっと厄介です。
ほかにも民間で、著作物の登録願を用意しているところもあり、これに創作内容や創作者名などを記入して登録すると、法的な日付を刻印して保存もしてくれるようです。
著作物の内容を記した登録願に、郵便切手を貼って、それに割印をすることで、公表したときの確定日付としているわけです。
ただし、これも実質審査とはならないため、その登録だけでは「真の著作者であること」を証明したことにはならないでしょう。それでも、作品を創作した著作者がそれを公表した日付の確定ということでは、それなりの利用価値もあるといえそうです。
なお、コンピューターのプログラム著作物の登録については、財団法人ソフトウェア情報センターで行うことができます。
ともかく、その権利の取得はきわめて容易な反面、無名の人にとっては、その創作事実の立証がなかなか大変なのが、著作権というものなのです。