「著作権」というのは、なにかを創作した時点で自動的に権利が発生するものです。つまり、どこかに届けることなく、権利が発生するものなのです。
ある著作物がひじょうに優れたもので、多くの人がそれを手に入れたいと考えているとしましょう。
その場合、著作物を創作した人は、その著作物の権利をもった著作権者となるので、当然のことながら、第三者からそれが使用(利用)されるたびに、膨大な著作権料(使用料)が入ることになります。つまり、儲かるというわけです。
それが小説や絵画でも、または歌詞や彫刻、映画であっても、同様です。ところで、自分の著作物と同じようにも見える(かなり似ている)作品が、偶然に他人によって作られていた場合、その権利はどうなるのでしょうか。
たとえば、自分が創作した「絵」や「俳句」、「詩」、あるいは「音楽」といった著作物と、偶然にも同じように見える作品といったケースです。
著作権には届出が不要といいましたが、こうした場合、無名の人にとっては(有名人でもない限り)、その著作物(作品)を最初に作ったのが自分であると証明する手立てが得にくいという側面があります。
自分で「これは何年の何月何日に、私が作りました」、あるいは「私にはその著作権があります」と言っても、それだけでは第三者に示す証拠とはならないからです。
作品の明らかな盗作(または著作権侵害)の場合はその限りではありませんが、2つの作品が偶然にも似かよってしまう、あるいは同一のものができてしまう、といったケースもあるでしょう。
実は、こうした偶然に作られた同一作品の場合には、それぞれの作品に著作権が発生しているのです。だから、両者ともに不都合が生じることもありえます。
それでも、やはり先に作品を作った人のほうに利益が集中することでしょう。あるいは、先に作品を作っていた者が、その後に偶然同じ作品を作った人のことを「盗作したにちがいない」あるいは「著作権侵害だ」として、訴えることもあるかもしれません。
訴えられるほうは「真似ではない、偶然に同じものができたんだ」と言い張るでしょうし、また訴えるほうにしても、それが盗作であるという証拠がない限り、それ以上は何も言えないのです。
このようなことは、稀にしか起こらないと思います。しかし、こうした混乱も、著作権に登録制度がないことから(つまり、創作の事実を立証するための届出が著作権に設けられていないことから)、まま起こりうることなのです。