実用新案の出願件数は、昭和62年まではずっと特許を上回っていたといいます。ところが、その後は出願件数が減り続け、今では特許の出願のほうが上回っているのです。
それは、前項で取り上げた、平成6年度からの新制度採用とも関係していると思われますが、ここではもう一度、特許と実用新案の制度上の違いをまとめてみることにしましょう。
特許の発明の対象は、「物品の発明」のほかに「方法の発明」というものがありました。それに対して、実用新案の考案の対象は「物品」に限られています。
そして、その物品の発明(あるいは考案)において、特許と実用新案のどちらに出願すべきかは、前にも述べたとおり、以前は「大発明は特許、小発明(創作程度の低いもの)は実用新案」というような考え方が主流を占めていたのですが、最近は制度的にも思想的にも、その境があいまいになってきていることもあり、今では出願人本位で決められるようにもなっているようです。
一応は、特許の対象を「発明」、実用新案の対象を「考案」と呼び習わしていますが、この定義も今ではデリケートなものだと言えそうです。
ただ、その発明物品が原理的にまったく従来品にないような、または大幅に異なるような場合には、特許出願のほうが適しているでしょう。この場合は、従来からの「新規性」の度合いで考えているわけです。
〔出願料の違い〕
出願制度の違いを比較すると、実用新案のほうは平成6年度から、前述の「無審査制度」を採用するようになりました。これにより出願と同時に、登録料も払うことになったのです。
〔権利存続期間の違い〕
さらに、特許の権利存続期間は出願の日から20年、実用新案のそれは出願の日から6年と、これも両者で大きな違いになっています。(但し、実用新案の存続期間は法改正により近々10年に延長されます。詳しくは専門家にお尋ね下さい)
このような制度上の違いから考えると、とくに急いで商品化するものでもない限り、小発明についても、実用新案よりは特許での出願のほうが、メリットがあることが分かります。
だから、たとえ小発明的な物品であっても(進歩性が低いとしても)、それを特許として出願する人のほうが、今後も主流でありつづけると思われるのです。