アイデアが熟すためにも試作は重要なステップ!アイデアを形にする

たまたま、友人のなかにも同じように、治療院の先生からいろいろと試作を頼まれてきたという者がいる。その友人に治療器具の試作を頼んでいたM先生は、実は東洋医学の世界では大変に有名な人(既に他界)だった。しかも、友人の試作による、その治療器具は、いまでも治療家の世界では、画期的なアイデアとしてよく話題になるものだ(それが何かはあえて伏せておく)。

手先の器用なその友人は、やはり自らもいろいろな治療器具をつくり、それらをアピールするようになった。とくに、弱電分野に強かったので、電子部品を使った治療具を作ることが多かった。市販されている健康器具などを分解する機会があると、さっそく中を開いて、次に作るもののヒントにしたりもした。

ところで、健康器具というよりは、リラクゼーションや学習促進効果に繋がるのだろうが、こうしたリラックス効果を上げるための「脳波の周波数を一定に同調させる(という)装置」も、幾つかのタイプが市販されていた。原理はいろいろあるようだが、一般的には精神が落ち着いた状態のα波の周波数に、同調させる唸りの音を聞かせるということだ。この唸りの音は、左右の耳から、わずかに異なる周波数を含んだ音を、同時に聞かせることで発生するという。左右の耳に流す周波数の差が、ちょうどα波の周波数に一致し、それゆえに同調するというものだ。
 
それは3万円か4万円はしたが、友人はその原理をヒントに、もっと安い部品の組合せ(異なる構造)からでも同じ効果が得られるとして、実際にそんな装置を作ってしまった。部品を全部あわせても、なんと1万円も掛からなかったのだ。

そこで、私も作り方を教えてもらい、それを自分でも作って楽しんでいた。工夫を重ねて、市販品のものと同じサイズにまでコンパクト化することにも成功した。

ある治療院の先生は、「市販のものよりも唸りの音が体によい(?)から」と言って、それを個人使用用として、製作の依頼をしてきた。ただ、これを業とするわけではないので、お金は製作に必要な実費分しか頂かなかった。市販されていた装置とは構造がまったく違っていたが、それをもとに大々的に販売したら、特許侵害だとも思われそうだし、第一、そういう商売には興味がなかった。

新しもの好きのO治療院の院長にもそれを見せると、やはり欲しいという。「脳波を同調させる装置」というと、何か怪しくも聞こえるが、案外、自律神経失調症ぎみの患者さんには効果があるのかもしれない(気分転換的にも)。

他でもやはり、市販のものよりも音がよいとか言われたので、自分でも気をよくして製作の代行をしてあげた。また、1台の装置で同時に2人の人が聞けるようにも改良した。 名前は便宜上「αポテンシャライザー」などと呼んでいた。試作を繰り返しながら感じたのは、それをもとに「カップル相性判定器」とか「感情の共鳴装置」、あるいは「安眠誘導器」のようなものも作れるかもしれないと思ったことだ。

実際に、何か自社製品を作りたがっていた、ある会社の社長が、それらを製作してもよいと言ってきたが、それはこちらからお断りした。もともと試作の過程を楽しんでいただけであり、この手のものを真剣に扱いたいとは思わなかったからである。それでも、この経験から、「アイデアが熟すためにも、試作はとても重要なステップである」ということは学んだつもりだ。

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