ただ、この型取り複製法を行うには、それなりの専用の容器や計量器具などが必要になるのはもちろん、各種薬剤にしても高価である。さらに、手間は掛かるし、作業を行うにあたっては、作業場の確保、十分な換気、火気厳禁などが、絶対的な重要事項となる。
なぜなら、型取りや注型に用いる樹脂類は、一般に用いる塗料や接着剤よりもはるかに強力な溶剤を使用しているからだ。また、樹脂類が直接に皮膚につかないようにも気をつけたい。以上のことからも、注型による型取り複製法では、マスクやゴム手袋も必要となる。
そこで、もっと簡単な「樹脂を使った成型法」があることも紹介しよう(ただし、複製を作ることはできないので、参考までに述べるにとどめる)。樹脂を使用するといっても、それには特別な設備、器具などが必要でないうえ、換気や火気にもそれほど神経質にならなくてもよいものだ。そのうえ、値段も安い。
それは「自由樹脂」(商品名)である。専門店にはこれが固形化した粒状の形で売られている。これを必要な量だけ取り出して、熱い湯に浸しておくと、プラスチック粘土のようになる。湯から取り出してもしばらくは柔らかいので、その間は、比較的、簡単に形を変えられる。軟らかいうちに望んでいる形に成型するわけだ。
固まるまでわずか2~3分。あるいは水に入れてもすぐ固まる。湯は60度以上のものを用い、これを陶器か耐熱ガラスの器などに注ぐとよいようだ。 十分に柔らかくなった自由樹脂を湯から取り出すときには、箸を使うと便利である。
形ができないうちに、冷めて硬化してしまっても、軽く湯に浸け直すことで、再び柔らかくなるので、作り直しも可能である。出来上がったものに、ドライヤーの温風をサッとあてると、表面にツヤを出せるし、またアクリル絵具や砂などを混ぜると、好みの色や質感も出せて、味わいも深まる。
この「自由樹脂」を用いれば、粘土のように手軽に作品を作れるし、樹脂製品のために仕上がりも綺麗だが、注型法による複製(コピー)には向かない(もちろん、一つひとつ手作りでなら、同じものをたくさん作ることはできる)。それでも、「自由樹脂」は、発明の試作品の材料として、十分に使えるものである。試作品そのものは一つあればよいからだ。
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