図工気分、図工感覚で試作品の製作をするとよい、と述べた。感覚的にはそういうことなのだが、試作をするうえでの材料や道具は、発明やアイデアの内容によって違う。なかには、ほとんど材料がいらないものもあるかもしれない。反対に、多くの素材を要求されるものもあるだろう。
しかし、材料といっても、試作品の段階では、その発明アイデアが商品化されたときのような立派な材質を使う必要はない。その材質が、発明の効果と関係する場合は、試作品にも同じ材質を使う必要があるが、そうでない場合、試作品を構成する材質には安価で作成しやすいものを用いるべきだろう。つまり、発明が商品化されるときには金属であっても、試作品も金属である必要はないのだ。もっと安くて、作りやすい厚紙やプラバンでもよいだろう。
実際に、発明試作の材質の大部分は、紙、プラスチック、布など、安価で手に入りやすいもので作ることができる。発明サンプル品が紙やプラスチックなどで作られていても、それを見ることによって、発明の「外観」「機能」「効果」などが分かればよいのだ。発明の試作品製作とは、こういう感覚なのである。完全なものを作る必要はない、いや、むしろ完全なものを作ってはいけない。これを「機能試作」という。
試作品には、安価で製作しやすいものでよいと言っても、部品の中には、特種な材質や器具も必要になるかもしれない。それに、それらを作るに際しても、何か特種な道具がいるかもしれない。それでも、ほとんどの材料、部品は、文房具店、日用大工店、それに東急ハンズ店などに行けば、揃えることができるだろう。
それに、試作品は1個あればよいので、何か他のもの(廃品など)でも、発明の構成に応用ができそうであれば、そういうものも積極的に用いることができる。だから、なんでもすぐには捨てずに、試作専用のガラクタ箱などを用意して、次に思い立った発明の際にもリサイクルができるようにしておくとよい。
ガラクタの効用である。「あのときに捨てなければよかった」と思ったことも、いままでに何回かあるのではないだろうか。マッチの空き箱、ファックス用紙を巻いていた芯棒、食べ終わった後のお菓子の容器、使い終わった後の名刺のケースなども、あとで思わぬ役に立つことがある。