よいアイデアが生まれるためには、やはり環境は大事だろう。その場にいるだけでストレスがたまるような不快な場所では、よいアイデアどころか、精神状態そのものが病んでくる。たしかに、発明家やSF作家のなかには、よいアイデアや面白い空想(ネタ等)をたくさん出せるように、自分の作業場にそれなりの工夫を凝らしている人もいる。
まずは、広々とした部屋、座り心地のよい椅子、壁には精神を落ち着ける効果のある配色が施され、さらには脳を活性化するとされるお香が炊かれたりもする。そして、それなりの効果をあげているようだ。
広い部屋や、大きな机、ふんわりとした椅子、アロマ効果を出すグッズなどは、たしかに気持ちを落ち着かせ、作業も捗りやすいので、理想的かもしれない。しかし、これだけの環境を整えるにはそれなりの金が掛かる。それに、よいアイデアが広々とした快適な空間のみから生み出されるというわけでもない。
広い部屋をもったり、金を掛けることもないが、それでも、自分なりの「集中しやすい場」を持っているに越したことはない。集中しやすい場というのは、同時にリラックスもしやすい場だと思う。リラックスというのも、一つの集中に他ならないからだ。いわば、「リラックスしながらの集中力」が維持できる環境がいちばん。だから、そういう場では、よいアイデア(思考力や空想力)も得やすいし、それに基づく作業も捗るといえる。
では、集中しやすい場とは、もっと具体的には、どういう場なのか。つまり、それが「その人なりの快適さを感じる場」ということなのだ。「快適さを感じる状況」というのは、人間であればみな、同じようなものだろうが、「快適さを覚える対象」には、人それぞれの好みがあり、多分に主観的なものだ。
要するに、いまの部屋が(自分にとって)快適になるように工夫することも大事だし、そういう快適さを覚える場所を幾つか見つけておくことも、よいアイデアやヒラメキを得るための秘訣なのである。そこで、自分なりの「アイデア・スポット」ベスト10を思い起こしてほしい。つまり、過去を振り返ってみて、身近なところで感じられた、落ち着ける場所や気分がよくなる快適な場所を幾つかピックアップしてみるということだ。
私であれば、それは「屋根の上」(アンテナ工事の際にはよく閃いた)、「山道」(特に、夜に歩く山道)、「風呂場」、「ファミリーレストラン」(特に窓際の席はよい)、「空いている電車内」、「トイレ」などが挙げられる。
実際、トイレはバカにならない。それなりの狭さでありながら、ホッと息が抜け、かつ適度な緊張(りきみ)も要求されるので、リフレッシュしやすいのだ。それに、昔からトイレは「すばらしい思考と空想を生む空間」として、アイデアの達人から重要視されていたのだ(実は、思考と空想が何かをもじったものだということはお分かりだろう)。
特に、あの瞬間(?)に快感を覚える人もいる。発想に詰まったら、トイレに行ってみよう。きっと、運も出てくるだろう。