ヒラメキと脳波(α波)の関係もよく知られている。α波の状態は、創造活動に適しているというものだ。臨床的には、このα波は身体活動や頭脳活動が盛んではないとき、すなわち、ぼんやりとしているときなどに、脳波上に多く出る。リラックスのときに、ヒラメキが起きやすいということとも一致する。
そのことから、α波を効率よく出すために、さまざまなリラックス法が考案されている。つまり、創造性を高めるために、最上のリラックスが求められたりするわけだ。
ただ、人によっては、リラックスの方法は違うだろうし、環境にも制限されるだろう。 それでも、大方の日本人は、いちばんリラックスできる場所はどこか、という質問に対して、「温泉地」と答えることが多いようだ。温泉場でのくつろぎが最上のリラックスだということだ。
温泉地は、それこそ開放的な気分にしてくれるし、それが露天風呂であれば自然と一体感も享受できる。そういう場であれば、ストレス解消にも、心身のリフレッシュにも効果があるだろう。また、アイデアに詰まったり、スランプ状態にある作家や芸術家は、気分を一新する場として、温泉地を選ぶことが多いようだ。温泉にでも漬かって、少しのんびりしていば、そのうち、よいアイデアも浮かぶだろう、というわけだ。
ストレス解消のためには風光明媚な温泉地に来たということも重要なのだろうが、創造的な脳波になるためには、湯に漬かること自体が重要らしい。だから、なにも温泉地に限ったことではない。リラックスの場所を自宅のお風呂場にしてもよいだろう。
実際に、温泉やお風呂に漬かっているときには、よいアイデアが浮かんだり、考えが纏まりやすいことはある。血行も改善されるだろうし、筋肉もほぐれるだろうし・・
数年前に新聞に報じられていたことだが、ある大学の研究室が、「温泉などで湯に漬かると、脳波がα波になりやすい」ということを、はじめて実験によって証明したという。これまでは、日本人なら経験的に感じていた温泉のリラクゼーション効用を、はじめて科学的に確認したことになる。
歴史上、有名な発明家・科学者にしても、偉大な発明・発見の陰に、どれだけ風呂の効用があったことか、そんなエピソードも集めてみたら面白いと思う。あのアルキメデス(古代ギリシャの物理学者であり哲学者)が「浮力の原理」を、風呂に漬かっているときに発見したことも、偶然ではないかもしれない。
工学者であり発明家の故糸川英男博士も、風呂好きだったと聞いたことがある。個人発明家はまず、自宅の風呂場(或いは行きつけの銭湯)を最上のリラックスの場として見直してみることをお勧めする。