浮かんだアイデアそのままでは、もちろんのこと発明は完成しない。アイデアが発明品となるために、またそれがヒット商品となるためには、さらにアイデアの質を高めないとならないだろう。つまり、より積極的にアイデアを加工することが必要であり、同時に、ヒット商品であるためには、そこにまたアイデアが不可欠なのだ。アイデアは育てるものだからだ。
さらには、「従来の製品はこういう形だが、これをこうしたら、どうだろう?」というような奇抜で、自由な発想を楽しめる、そんな心の余裕も必要だろう。頭の中ではモノをどのようにも変えられる。我々は、イマジネーションをもっと利用するべきだ。
Nさんは、「常に爪先立ちになるスリッパ」というヒラメキから、実際に普通のスリッパから、踵の部分を切り落として履いたことで、その効果が自分でも確かめられた。Sさんの場合も、「バンダナのようなヨダレ掛け」というアイデアを、実際の布で自ら作ったことにより、その効果を確かめ、また近所の主婦からも共感を得られたのだ。
また、Sさんの場合では、カラオケの場所とコンテナの内部が頭の中で結合したことで、カラオケボックスを思いつき、それを実際に応用するに到ったのだ。さらに、それまでは全然関係ないと思われていたものを結合させることで成功した例には、あの「雪見大福」(アイスと大福を一緒にしたお菓子)がある。一回、誰かがやって、それが成功すると、後は似たような発想でいろいろなものが作られる。世の常だ。
このように、従来あるものを、「切る(半分にする)」「形を変える」「くっつける」の他に、「大きさを変える」「色を変えてみる」なども、新しいアイデアを生んだり、あるいは一つのアイデアをさらに育むうえでのヒントになるだろう。
既成概念を一時的にも棚上げすることは、アイデアを洗練化するためにも望ましいことである。ちなみに、あの「プリクラ」にしても、発案者であるSさん(発明当時29歳)が、ゲームソフト関連の会社で作業をしている最中に、分割された写真と自分の顔が写ったシールとを頭の中で結合させたことが発明のキッカケなのだ(1994年)。
Sさんのプリクラ発案のエピソードを報じた、あるテレビ番組によると、彼女はそのときに、広報用資料を作成していた社員が手にした「4分割された写真」を目にしたことや、フロッピー用のシールに偶然に自分の顔が写ったことをヒントに、あのプリクラを思いついたというわけだ。そして、やはり、常に面白い写真ができないかということが彼女の感心事だったのだ。
プリクラは、千台売れればヒット商品だとされるゲーム機の中で、2万4千台以上もの驚異的な売り上げをあげた、まさに超ヒット発明商品となっている。この例は小物発明ではないが、やはり女性が発案したヒット商品である。「たまごっち」にしてもそうだったが、女性が生むものは子供だけにあらず、まさにヒット商品の卵(アイデア)もしかり!
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