このタイプの人は、単なる「思いつきだけの人」とは違って、一つの課題をじっくりと考え抜き、慎重にアイデアを練り上げていくのだが、それ以上先に進むことを欲しない。
課題を解決していく過程で練り上げていったアイデアも、それゆえに、かなり洗練されているのにもかかわらず、それを製品化、あるいは発明品として形にはしないのだ。
当面の問題が解決できれば、それで満足してしまうからだ。それが大衆にも受けるアイデアや発明品であれば、発明の権利者として大金を手にすることもできるのに、このタイプの人は、次のステップには興味がないのだろう。
パズルを解くのは好きだが、いったん解けたら、それ以上のことはしないのだ。優秀な発明家の中には、案外こういうタイプも多いのだが、これでは発明で成功するのは難しい。どちらかというと、職人気質の発明家タイプだともいえる。
自分が抱えた問題がアイデアによって解決してしまうと、もうそれだけで満足してしまい、そのアイデアを大衆のために形にはしないというわけだ。つまり、アイデアがどんなに斬新で効果的であると確かめられても、本人がそれ以上のことをしなければ、素晴らしいアイデアは多くの人の目に触れられぬまま、ただ埋もれてしまう。
商品化して儲けたり、会社に売り込んでロイヤリティの収入を得ようなどという欲を持たない良い人だ、と思われるかもしれない。だが、それを外に出さなければ(形にしなければ)、せっかくの素晴らしいアイデアも大衆にとっては享受できないままだ。
特許出願の手続きをしたり、新製品の企画書や売り込みのための提案書を送ったり、試作品を作ったりするのが、煩わしく、あるいは苦手に思う人もいるだろう。そうかといって、このタイプの人は、弁理士に出願を依頼したり、試作や売り込みを他の人に頼むことすらしようとしない。
仮に、このタイプの人が、会社の新製品プロジェクトチームなどに参加していれば、それぞれに役割分担ができているので、得意のアイデアを提供するだけでも、あとは別の専門家が書類作成や試作品製造などを担当してくれるかもしれない。
だから、このタイプの人は一人では成功しにくいが、企業の中では力を発揮しやすいといえる(ゆえに、企業内では成功する可能性あり)。
しかし、個人発明家としては、やはり成功からは遠いタイプとなってしまうのだ。潜在的には、発明で大成功するだけの要素を持っているのにもかかわらず、実に惜しいことだ。