「小物発明こそ、個人発明の王道である」と前に述べたが、個人発明家のなかでも特に、主婦の発明家には、大変に優れたセンスを持つ方が多いといえそうだ。
主婦に限らず女性で発明を志す方は、なにか男性とは違ったモノの見方、感性を持っているようで、彼女らによる小物発明にはキラリと光るものが多いのだ。
つまり、けっして大それた高度な発明などではなく、身近な生活範囲内でよく使われるような、素材も構成も簡単な発明(小物発明)で成功しているのは、男性に比べて女性のほうが目立つということだ。主婦をはじめとする女性発明家の成功エピソードが多い理由としては、次のように説明されることが多い。
すなわち、「女性(主婦)は男性と違って、家事に密着し、また調理などで台所にいる時間が長いから、その分、生活の中の不便なことによく気がつく。よってそれらを解消したり改良する機会を持つからだ」というわけだ。
たしかに、それもあるだろう。しかし、今や女性も男性と同じように、社会に出てバリバリと仕事をこなしたり、また営業の世界でも活躍できる時代になっている。新製品開発会議にも参加し、積極的にアイデアの提案もしている。
そういう場においても、どうも、女性社員のほうが、男性に比べて、アイデアに柔軟性と広がりがみられるようだ。こうした頭の柔らかさは、女性特有のものだろう。
新製品の対象が、女性や子供に向けられている場合には、やはり女性からの発案に光るものが多いのは当然といえる。そして、その場合、企業のバックアップもあるので、小物発明に限らず、国民的な大ヒット商品として突如、大ブレイクしたりする。
日本人なら知らない人はいないだろう(外国の人にも一時は広く知られたが)、あの「タマゴッチ」や「プリクラ」も、女性社員の発案から生み出された。
こうした「女性ならではの発明力」とでもいうべきものがあると考えている(便宜上、発明を生み出す思考力のことを「発明力」ということにする)。そして、いまは女性の感性が、社会の到るところで求められており、それが女性が活躍できる時代にうまくマッチして、成功する女性発明家が目立つようになったのだろう。
ヒラメキや直観にしても、女性はもともと、男性よりも優れたものがあるといわれる。男性と女性とで、こうしたヒラメキ度の違いを探ってみるのも面白いだろう(これによって、女性の直観能力を検証したことにはならないが)。
もちろん、男性にも「男性ならではの発明力」がある。男性は、複雑で緻密な構造をもつ機械や電子機器の分野において思考を働かすのが得意な傾向にあり、日夜、その分野で発明力を駆使している。これらは絶対的なことではないが、少なくとも男女の性差による傾向はあるのだ。
当然のことながら、女性であっても複雑な機械や道具を発明することだってありえるし、逆に男性だって、台所用品や家庭日用品分野で多くの発明をしている。ちなみに、あの「穴あき包丁」も、男性による発明なのだ。
もっとも、発明者は刃物業者であるが(これによって薄切りした野菜が包丁にくっつかず、快適な料理ができるようになった)。なんにしても、解剖学的な性差によって、男女の脳に、発明に対する感性の違いが生じていることは、大脳生理学の見地からもいえることだろう。