自分が仕掛けた幾度の窮地を(たとえ彼女や野鼠の助けがあったとしても)切り抜けてきた葦原醜男命、建速須佐之男命としても認めざるを得ません。
悪巧みも大人しくなってきます。
次に建速須佐之男命が葦原醜男命に命令したのは髪の虱(シラミ)を取ること。
でも髪にいたのは虱ではなくムカデでした。やんちゃなオヤジですね。
葦原醜男命は彼女である須世理姫から「お父さん、きっといたずらするからこれ持っていって?」と渡された椋の実(むくのみ)と赤土を噛み砕いてムカデ退治を行いますが、建速須佐之男命、それを葦原醜男命がムカデを噛み砕いている音と勘違い、「ふふ、かわいいとこあるじゃねーの」などと心を許し、寝てしまいます。
葦原醜男命、さすがに忍耐も限界、寝た建速須佐之男命の隙を見て髪を柱に結びつけ、須世理姫を背負うと行き掛けの駄賃、とばかりに建速須佐之男命の弓矢、刀、それから須世理姫の琴を奪って逃走しようとします。
そういうセコいことを考えるからいけません。
逃走の際、琴が木に触れ、鳴り響いてしまいました。
その音を聞いて目を覚ました建速須佐之男命、怒り心頭、髪に結び付けられた柱を引っこ抜き、葦原醜男命をこの世と思えない形相で追いかけ始めます。
いくら丸くなったとはいえ、かつての荒ぶる闘争神。
しかも奪った彼女の父親。
もう流血惨事、必至です…。