娘、須世理姫がいきなり、どこの馬の骨とも知らぬ神様を連れてきたものだから、父親の建速須佐之男命はかつての荒ぶる神様の本領を発揮します。
まず連れてきた大穴牟遅神に対し、「こいつ、ただのブ男じゃん。名前なんて葦原醜男命(アシハラシコヲ)で十分さ。はっはっは。まあ、せっかく来たんだから寝床でも用意してやれ。そうだな、蛇の室屋はどうだ?」などと告げます。
いやあ、陰険ですね。
ちなみに次の夜はムカデの室屋に寝るよう、命じます。
どちらも彼女の須世理姫の機転によって救われる葦原醜男命ですが、今度は建速須佐之男命、野に鳴鏑(ナリカブラ:矢の一種)を放つと「おおい、ブ男、あの矢を拾ってこい!」と下僕のような扱いをします。
もちろん魂胆あってのこと。
「この野郎、娘をたぶらかせやがって。火攻めにしてくれるわ!」と言ったかはともかく野に火を放つと、たちまち葦原醜男命は火に囲まれ、絶対絶命。
その時、野鼠が現れ、穴に隠れる助言をするだけでなく鳴鏑まで持ってきてくれます。
焼け野原を見て嘆き悲しむ須世理姫、ざまあ見ろ、と焼け野原で死体を探す建速須佐之男命、そこに煤だらけになりながらも鳴鏑を持って颯爽と現れる葦原醜男命。
もはや、気弱などこにでもいる神様ではありません。
建速須佐之男命に、ざまあ見ろ、という番です。