伊耶那岐命が鼻を洗って生まれた建速須佐之男命、最初は三貴子ともてはやされ、海原の統治まで任されたほど将来を嘱望された、生まれながらのエリートでしたが、じつはこれがとんでもないボンボン息子。
なにしろ生まれてすぐに顎鬚をたくわえるという成人でありながら、母である伊耶那美命に会いたいとばかり、海原の統治を行うどころか毎日泣いてばかり。
その泣き声は大地を揺るがし、山の緑を枯らせ、海を干上がらせると万事に災いをもたらすために、伊邪那岐、ついに堪忍袋の尾が切れて「どこにでも勝手に行け!この地から出ていけ!」と葦原中国(あしはらのなかつくに)から追放します。
この葦原中国、要するに人間世界、日本のことですね。
神様が住んでいるのは高天原、そして伊邪那美がいるのが黄泉国(根の国ともいいます)。
この宇宙観は世界の神話で共通しているのが興味深いところ。
ギリシャ神話ではオリュンポス山頂上の宮殿という天界と地上世界、それからハーデスが支配する冥界があり、北欧神話では神様が住むアースガルド、死の世界であるムスペルヘイムとニヴルヘイムがあって、その間に6つの世界が存在するという宇宙観を作り上げています。
さて、葦原中国を追い出されたボンボン息子の建速須佐之男命、母のいる根の国へ行く前に、ひと目、姉である天照大御神がいる高天原へ行こうとするのですが・・・。