火の神、火之迦具土神を産んだことで黄泉国に旅立ってしまった伊耶那美命を諦めきれない伊耶那岐命は黄泉国まで出向いて伊耶那を取り戻そうとします。
悲しみと怒りの余り、自分の子供でもある火之迦具土神を斬り殺しちゃったり、死者を追いかけて黄泉国に行ったりと半狂乱の神様、伊邪那岐です。
なんか、人間っぽいですね。
しかし伊邪那美は迎えに来た伊邪那岐に対し、黄泉国の門を隔て、「私はすでに黄泉国の食べ物を食べてしまったので帰ることはできません」と追い返そうとします。
それでも食い下がる伊邪那岐を哀れと思ったのか、「では黄泉神と相談しましょう。それまでここで待っていてください。けっして私の姿を見ないように」と答え、2柱を隔てている門から姿を消します。
なんと健気な伊邪那岐。
しかし半狂乱の伊邪那岐にそんな説得は通じません。
なかなか戻ってこない伊邪那美にしびれを切らし、自らの角髪(ミズラ)に刺していた櫛を折り、それに火を灯して門の中を見てしまいます。
そこで見たのは、身体は腐って蛆が集り、蛇の姿をした雷神8柱が身体にまとわりついていた、見るも無残な伊邪那美の姿でした。
「…見たな」
伊邪那美は、先ほどの美声とは違った、しわがれた低い声を伊邪那岐にかけました…。