目立たくも大八島を誕生させた伊耶那岐命と伊耶那美命ですが、ちょっと話はそれて海に流された水蛭子の話。
神々が不具の神様を生むというのは日本神話だけでなく、世界中の神話に登場してくるので特異というわけではありません。
ギリシャ神話なんて、最初の女神であるガイアは自らの意思でギリシャ神話最強の怪物であるデュポンを生み出していますし。
それに比べると水蛭子はおとなしいものです。
元来、日本神話が生まれる前、神話は土着性が高く、四方を海に囲まれていた古代人は海からの漂流物を崇める民間信仰がありました。
海からの漂流物は海からの授かりもの、海の恵みを与えてくれる海神様だったわけですね。
これが平安時代、日本神話が誕生した後に、海へ流された水蛭子とえびす神が結びつき、水蛭子を祭神とする神社が登場します。
水蛭子神をえびす神と読む神社が各地に点在しているのはこのような経緯からです。
もっとも、この水蛭子、ヒルのコ、日子と書いて古代人の太陽神だったという説もあります。
いずれにしろ、海に流されてしまった不具の神様を哀れと思い、再生の念を込めて祭神にするところが、日本人の美徳といえるでしょう。