ここから読み始めた人は前回の「プロメテウスの火」からお読みください。
プロメテウスの行動に怒ったゼウスはプロメテウスの愚弟エピメテウスに絶世の美女パンドラを送りつけます。
賢兄プロメテウスから「ゼウスの贈り物だけは受け取るな」と強く忠告されていたにも関わらず、愚弟のエピメテウスはパンドラと結婚してしまうわけですね。
パンドラはエピメテウスと結婚後、託された「絶対に開けてはいけない龜」に対する好奇心が募り、やがて龜を開けてしまいます。
そして、この龜からはあらゆる災いの神、死の概念であるタナトスやケール、モロスなどの神々や復讐の神ネメシス、争いの神エリスなどが飛び出して人類の世界に災いが蔓延します。
パンドラは龜の最後にエルビスという神を見つけ出しますが、エルビスが飛び出す前に龜を閉めてしまう、というのが「パンドラの箱」の粗筋です。
この神話、エルビスが何の神であるかを明記していません。
というのも、この神話の主張は「パンドラの箱」ではなく、パンドラという災いの元を作った全能の神ゼウスを称える話であり、人類はゼウスの御心から逃れることはできない、というのが主題なのです。
つまり、龜の中に残ったエルビスが「希望」だった、というのは後々の解釈ですが。古典ギリシャ語では「予兆」とか「希望」とか「期待」という意味もあるそうなので、ここから「パンドラの箱」を強調した話が生まれたといえます。
To be continued.