では、ほんとうに「ある音」が「ある形態(形状)」を形作るということがあるのでしょうか? それも簡単な実験器具によって、確かめられます。すなわち、「クラードニ図形」として知られる、れっきとした物理現象によるものです。
これは、金属板の上に、砂や塩、あるいは何かの胞子など粉体を均一にまいてから、金属板の端をバイオリンの弓、あるいは細い棒などで、こすっていくとそのときの振動具合によって、粉体上に様々な模様(パターン)をもたらすというものです。こする際の振動に応じて、決まった形状が現れるのです。あるいは金属板の上から、声を発してもそれが空気を伝わることである程度のパターンが生じます。
他にも、「トノスコープ」や「エイドフォン」など、音の振動によって粉体上に様々な模様をつくるための実験装置があります(こういう学問はサイマティクスとも呼ばれる)。装置に向かって発する音声振動によって、粉体は実に様々なパターンをつくります。そして、「オオオ」という音声はまさにアルファベットの「O」の文字に近い形を粉体上につくるのです!
もちろん、完璧な球形、もしくは円形というよりかは、ちょっと歪な円形でもあり、見ようによっては「六角形」にも見えます。いずれにせよ、閉じた輪を形成するようです。このように、それぞれの母音の振動はどれも、粉体上に異なる、特有のパターンを形成させるのです。
以前、博多のガス・ミュージアムを見学した際に、その中にこうした装置が展示されているのを見つけ、さっそく「オオオ」と発声してみることにしました。すると、ほんとうに粉体が大きな「Oの形」になったので、改めて感動した覚えがあります。
少なくとも、「オオ」(O)という音の振動は、実際に空間において「Oの字状」の波動を伝えることが解ったのです。
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