「母」と「海」の性質が近いことは、それこそ「漢字」の中にも現れており、そのことから中国人や日本人には理解しやすいことです。またフランス語でも両者の単語は互いに似通っています。フランス語で「母」は「m?re」で、「海」は「mer」というのです。
これらを表現した素晴らしい詩があります。
海よ、
僕らの使う文字では、お前の中に母がいる
そして母よ、
フランス人の言葉ではあなたの中に海がある
「郷愁」 三好 達治 作
なにしろ、「海は生命の母」というのは、科学的事実でもあるのです。古い言語では、この「m」の音は、特に「水」を指しているようです。
ヘブライ語で「水」のことを「マイム」ということは、日本にも伝わっている有名なフォークダンスの曲名(「マイム・マイム」※)からも意外と知られています。そう、「マイム」とはヘブライ語で「水」のことだったのです。
また、ヘブライ語のアルファベットの「m」にあたる「メム」自体にも「水」という意味があります。面白いことに、日本語でも、それから韓国語でも、「水」のことをそれぞれ「ミズ」、「ムル」と表現し、やはり「m」で始まる音なのです。
※ コラム 【「マイム・マイム(水よ、水よ)」(「水の恵みに感謝する歌」)】
日本ではフォークダンスの曲で有名な歌。歌の中では特に「マイム・マイム・マイム・マイム、マイム・ベッサッソン!」というところが有名。「マイム」は「水」、「ベッサッソン」は「喜んで」ということ。
「サッソン」(SSWN)は男性名詞で「喜び」「歓喜」という意味。全体的には、泉を見つけて、その水の恵みに感謝するという内容の歌になっている。ちなみにこの歌は「ウシャヴテム・マイム」(Ush’avtem mayim)という曲名でも知られている。
これは、旧約聖書の「イザヤ書」第12章3節の「あなたがたは喜びをもって、救いの井戸から水を汲む」(日本聖書協会)という箇所を歌詞にしたもので、イスラエルでは神への感謝を捧げる祈りともなっている。
この「マイム」という語は、古代のアラム語で「母なる神性」という語と同根であったといい、そこから「女神」や「海」を示す単語に使われる「Mar」という語根とも関係があるのではないかと考えられている。