大昔の言葉ほど、こうした「音」と「イメージ」の間には密接な関係があったはずです。
たとえば、英語の辞書をざっと見てみても、なにか暗いイメージ、あるいは深く深遠な、そして人知を超えたものといった、重いイメージの単語には、「D」や「G」といった濁音が多く使われています(dark, deep, death, demon, ghost, gloom, god, etc)。
一方、明るく清らかで軽い、あるいは友好的で親しみやすいイメージには、「L」や「P」の音や、清音が使われることが多いようです。
英語やフランス語などにこういう傾向があるのは、それらのもとになったラテン語の言葉にもともと、そうした性質があったからなのでしょうが、さらにそのルーツになった言葉では、より「音とイメージ」の関連が強かったものと推測されます。
子音「M」は、「円熟」「丸いもの」「やわらかいもの」「海」「母性」といった性質を示す傾向にもあるようです。
英語でもmaturity(円熟),marine(海の),mild(柔和な・優しい),mother(母親)というようにです。語族の異なる、他の多くの国でも「母」は「ママ」や「マンマ」「オンマ」「オモニ」などと、やはりM音が使われています。
それは、子供がもっとも身近な母親のことを呼びやすい音であることにも関係しているのでしょうが、このように、「M」の音には「母」「海」「水」といった、「やさしく包み込む性質」という意味を漂わせる共通感覚(イメージ)があるのだと考えられます。