アメリカン・フィルム・インスティチュート(AFI)が選出したアメリカ映画名セリフ・ベスト100の中で、もっとも多くランクインしている作品が「カサブランカ」です。
1942年に公開され、1943年には第16回アカデミー作品賞、監督賞、脚本賞を受賞したアメリカ映画史に残る傑作ですね。
物語の舞台はモロッコのカサブランカ。
1942年当時、モロッコはフランスの親ドイツ政府、ヴィシー政権に占領されており、その辺境の地で「カフェ・アメリカン」を経営する主人公リックと、ドイツ抵抗運動の指導者ラズロの現在の妻であり、かつてはリックの恋人でもあったイルザとのラブ・ロマンスです。
1942年といえば太平洋戦争真っ只中、ミッドウェー海戦が6月に始まり、広島と長崎に原爆を投下するマンハッタン計画が開始された年。
そんな状況の中で映画史上に残るラブ・ロマンスの傑作を生み出すのですから、やっぱりアメリカと戦争なんかしちゃいけなかったんですね(いや、どこの国が相手でも戦争しちゃいけないんですけれど)。
ただ、「カサブランカ」はラブ・ロマンスでありながら枢軸国(第二次大戦中、連合国と戦った諸国)が舞台となっているだけに、枢軸国に対する反発が物語の縦軸になっており、ドイツを貶める場面も数多くあります。
戦時中ということもあり、巧妙に観客の目をラブ・ロマンスに向けたプロパガンダという評価もないわけではありません。
もちろん、見る方がプロパガンダという認識を持ってさえいれば、このような名作は大歓迎なんですけれど。