映画の名セリフが日本で定着したのはイラストレーターの和田誠さんが綴ったエッセイ、「お楽しみはこれからだ」に因るところが大きいでしょう。
シンプルな線画で描いた映画俳優や著名人のイラストを見た人も多いはず。
映画に関する造詣が深いことから映画雑誌の「キネマ旬報」に名セリフのエッセイを連載、それをまとめて書籍にしましたが、大好評からPART7まで発刊されています。
このタイトルとなっている「お楽しみはこれからだ」も映画の名セリフのひとつ。
1927年の、まだ完全にトーキー(映像と音声の同期のこと。今では当たり前ですが、当時はパートタイム・トーキーでした)になっていない時代の映画、「ジョンソン物語(原題:The Jazz Singer)」からのセリフです。
「Wait a minute, wait a minute. You ain’t heard nothin’ yet!」
これが英語のセリフですから、直訳すれば、
「ちょっと、ちょっと待ってよ!君はまだ何も聞いていないじゃないか!」
的な内容になるはずなのに、それが「待ってくれ!お楽しみはこれからだ!」になるというのは翻訳の妙、と言えるでしょう。
実際、アメリカ映画名セリフ・ベスト100では71位のランクインですが、むしろ日本ではもっと上位に入るのが確実と思われるほど、名セリフとして浸透しています。
和田誠さんのエッセイ、翻訳のセンスのおかげ、ですね。