子供が主人公ではなく、大人達がしっかり描かれているストーリー性重視のアニメも『カウボーイビパップ』を始めとしてずいぶんと出てきましたが、その中でもっともメジャーな存在となっているのが『攻殻機動隊』でしょう。
原作のコミックが初出したのは平成元年(1989年)で、単行本となったのはそれから2年後、いかにこの作者の士郎正宗が遅筆であるか、よく分かる事実ですが、この原作を読めば遅筆の理由も分かるでしょう。
とにかくストーリーが難解である上、専門科学用語が頻繁に出てきて、その解説を欄外に記すものだから、読み手としてもある程度のレベルが求められる作品でした。
それを比較的分かりやすいところだけを抽出してつなぎあわせ、劇場公開版アニメとしたのが押井守監督です。
この劇場公開版によって、それまでカルト的人気だった『攻殻機動隊』をメジャーな存在に引き上げたといってもいいでしょう。
といっても、日本国内ではまだ難解な部分があったのか、あまりヒットしませんでしたが、海外で高い人気を集め、とくに北米ではビルボード誌のビデオ週刊売上で第1位を獲得、つまりその人気が日本に逆輸入という形で着火しました。
原作のコアなファンから見れば物足りない劇用公開版ですが、そのインパクトはそれまでの大人のアニメを一蹴するほどの出来栄えとなっています。