昭和臭が濃厚な『あしたのジョー』は永遠のライバル、力石徹の死と矢吹丈の壮絶なラストシーンによって日本のコミック史に燦然と輝く作品として、その名を刻みました。
そのラストシーンは今なお、ストーリーの謎として語り継がれています。
矢吹丈は死んだのか?
この問いに作者のちばてつやは何も応えません。
原作者である高森朝雄(梶原一騎)はすでに亡くなっていますが、じつは『あしたのジョー』に関しては原作者よりも作画を担当したちばてつやの意思が強く反映しています。
とくにラストシーンに関してはちばてつやのオリジナルと言われています。
…矢吹丈は死んだのか?
このラストシーン、わずかに伏線として登場するセリフがあります。
「俺、負い目や義理だけで拳闘をやっているわけじゃないぜ~中略~そこいらの連中みたいにブスブスとくすぶりながら不完全燃焼しているんじゃない。ほんの瞬間にせよ、まぶしいほど真っ赤に燃え上がるんだ。そして後には真っ白な灰だけが残る~中略~そんな充実感は拳闘をやる前になかったよ」
死んだかどうか、それより好きなことをやって絶対的な充実感を味わうこと。
それがラストシーンにすべて凝縮されているのです。
こんな充実感、人生一度でいいから味わってみたい、そう思いませんか?