1997年に亡くなったSFショートストーリー作家、星新一の作品は現在でも寓意の込められた作品として十分に通用する実力を持っていますが、それ以上に素晴らしいのは、星新一の作品はつねに本人によって改変が加えられて時代に即し、小説家が使いたがる難しい漢字を排除して当用漢字を使い、登場人物を少なくして固有の名前をほとんど与えなかったこと。
つまり、本を手にした誰もが物語を楽しみ、それでいて寓意を感じ取れるところにあります。
現代のインターネットを予測した「声の網」では当初、「電話のダイヤルを回す」とありますが、「電話をかける」に訂正されていたり(1980年代後半になるとダイヤル式電話の受話器にカプラーをはめ込み、デジタル信号をアナログに変換して送受信していたので、SF的にはダイヤルを回す、の方が面白いのですが)、電子頭脳はコンピューターに訂正されていたりしました。
特定の固有名詞を使わないのは読み手に固定観念を与えないことに通じ、当用漢字だけを使えば中学2年生であれば確実にすべてを読むことができます。
伝承されている寓話と同じスタンスですね。
実際、星新一は自ら「現代のイソップ」と語っていました。
星新一の作品は全部で1000作品以上あります。
どの作品を読んで、寓意を汲み取り、教訓とするかは貴方次第でしょう。