前項で星新一の初期作品「おーい でてこーい」を紹介しました。
すでに寓話を超えて現実の世界となってしまったことが大変、残念です。
ちなみに福島県が原発の誘致を始めたのは1960年ですから、それより2年も前に本作が執筆されていたことに大きな驚きがあります。
星新一の父、星一(ほしはじめ)氏が福島県いわき市出身であることは、何かの縁があったのでしょうか。
こうなると寓話というより未来予測ですね。
星新一の小説には正確な未来予測が多く、この辺り、やはりSF作家のアーサー・C・クラークやレイ・ブラッドベリと共通しており、巨匠であることの一端を垣間見ることができます。
たとえば1970年の「声の網」は現代社会のインターネットとそれにまつわる問題を描いています。
ちなみに1970年はインターネットという言葉すらなく、タイムシェアリングシステムという概念だけがあり、UCLAとスタンフォード研究所、さらにUCサンタバーバラ、ユタ大学だけが接続された通信網でした。
ユニークなのは同じく初期作品の「ボッコちゃん」。
バーのマスターが趣味で美人のホステスのロボットを作ります。
美人ロボットのホステスはオウム返ししかできませんが、酔った男たちは喜んで美人ロボットに酒をごちそう、マスターは客が帰った後、その酒を回収してまた売るけれど…。というストーリー。
ちょっと前に流行った「ダメよ~」というギャグの原型みたいなものです。
もっともオチは星新一の描いた結末とかなり違っていますが、日本エレキテル連合のオチもかなりシュールで十分にSF的、寓話的と言えるでしょう。
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