絶対にカメを追い越す事ができないウサギ、ゼノンのパラドックスが生まれたのかというと、ピタゴラス派の数と無限、一性と多性の考え方に対して批判を込め、背反理論として提示したからです。
寓話がテーマなので、もうちょっと簡単に言うと「数を定義として無限を設定すると前提に誤りが潜んでいることに気がつかなければ非現実的な結果であっても正しいと受け入れなければならなくなる」と主張しているわけですね。
先ほどのウサギがカメに追いつけない話、実際はウサギではなくギリシャ神話のアキレスですが、これの元になったのが二分法です。
A地点からB0地点まで移動するには、その距離の半分地点であるB1地点に行かねばならず、B1地点からB0地点まで行くためにはその距離の半分地点であるB2地点を通らねばならず、さらにB2地点からB0地点に移動するためには、その距離の半分であるB3地点を…と、数と無限を前提にするとB0地点には永遠に到達できないことになります。
ゼノンのパラドックスを寓話や寓意に結びつけるのはやや強引であることは承知していますが、このパラドックスの面白いところはどこに誤りの前提があるのか、それを調べる点にあります。
誤りが見つけられずに論理的に流されてしまうと「23分間の奇跡」の結末のようになってしまうので、ぜひパラドックスの落とし穴を見つけてください。
興味を持った人は「飛んでいる矢は止まっている」というパラドックスを調べてみるといいでしょう。