もうひとつ、イソップ物語から誰もが知っている寓話、「ウサギとカメ」を例に上げましょう。
いつもウサギに足が遅いとバカにされていたカメはとうとう怒り心頭に達し、ウサギに山の麓まで競争を挑みます。
当然、その勝負を受けるウサギ、いざ競争が始まればカメを残して山の麓まで一気に到達、カメが見えないのをいいことにゴール前、余裕綽々で待っていればやがて睡魔に襲われ、眠ってしまいます。
しばらくして目を覚ましたウサギがそこに見た光景は、自分が寝ている間に遅い足でウサギを追い越し、そしてゴールして喜んでいるカメの姿でした、というお話。
この寓意、子供の頃の教科書では当然、自分の力を過信して油断すると大切なことや物を失う、とか、たとえ能力が低くても脇道にそれず、諦めずに続けていれば必ず最後には大きな成果が得られる、という教訓ですね。
これじゃあ、余りにも道徳的過ぎて大人の世界に当てはまりません。
油断大敵は分かりますが、やはりゴールしてから寝るべき、というのが教訓でしょう。
偶然で一度は勝てても二度目はない、なんて寓意を感じ取れるのも素敵ですね。
ハリウッド映画では必ず正義の味方がコメカミに銃を突きつけられてピンチに陥りますが、そこでも必ず悪漢はくどくどと台詞を続けているうちに正義の味方が難局を偶然的に乗り越え、悪漢を倒すというシーンを見ますが、これがつまらないのは「ウサギとカメ」の教訓がまったく活かされていないのが大きな理由です。