昔は無趣味で、商売以外に何の興味もなく、女性に対しても、石部金吉、木念人というのが、事業を繁盛させるタイプだと考えられていたものだ。しかし、現代は違う。これはなぜかというと、複雑混迷化した文明のせいである。昔は、米屋は米だけを、いかに多く売り、いかに多く利潤を上ければよいか、それに専念していればよかった。ところが、今日のように、目まぐるしく変る世相と、人々の好みは、社会的需要の品さえくるくると変えて行ってしまうのである。
かつて、ロングスカートやミニスカートを流行させたファッション界の仕掛け人は、もうその神通力を大衆の上に用いることは出来なくなり、幾つもの有名会社が倒産した。
現代における経営に最も必要とされる要素「情報収集力」があらたに加えられるようになったのも、この故である。これはたんなる「市場調査」などによってカバーしきれる問題ではない。今日の経営者およびビジネスマンにとっては、常に新しい刺戟を求める基本的な心の姿勢が必要なのである。
そのためには、どのような階層、どのような種類の人間とも、自由に交流できるような柔軟性を具備することが大切だ。その上に努めて、色々な人脈に触れて行くよう心がけるべきである。そして、そこには二つの精神が適当に用いられなければならない。その二つの精神とは
1.遊びの精神
2.思いやりの精神
の二つである。人々と交わるには、自らがそこに楽しさを感じ、そしてまた、人々を楽しくさせるよう配慮することが肝心である。こうすることによって、人々は価値の高い新鮮な情報をあなたに提供してくれるようになるものだ。