「他人の自己重要感を高める者は、その見返りとしての報酬を受ける」これは正に真理である。実業界におけるトップクラスの成功者は、多くの場合、非常に腰が低くて、それに接する人をしばしは驚かせる。
それは「みのるほど頭(こうべ)のさがる稲穂かな」という古語の示すとおりである。
被らは、相手の自己重要感を高め、満足させ、その結果として、莫大な報酬を受けたのだ。ところで、相手の自己重要感を高めるには二つの手段がある。
その第一は、賞讃、お世辞、また、相手の話に真剣に耳を傾けることによって「相手の自己重要感そのものを高める」ことである。そして、その第二は、自らの腰を低めるか、または、ユーモアのセンスを用いて、「精神的に自分の位置を低くして、相手に優越の喜びを生じさせる」ことである。
すなわち、相手をそのまま高めるか、あるいは、自分自身を低めるかのどちらかで、このいずれも、相手に優越の喜びを与えるのである。特に注目すべきは、これらの方法には、おカネが全然かからない点である。しかも、その報酬は莫大なのだ。
にもかかわらず、この世の中には、この方法を用いることのできる人は、実に少ないものである。これはなぜかというと、それは、殆んどの人々は、自分自身の自己重要感について不足感を持ち、すでに悩んでいるからなのだ。
そして、前記のような精神的なお布施を、他人に施すより、他人から自分に対して与えて欲しいと願っているのである。すなわち「人にやるどころじゃない。こっちで欲しいくらいだ!」というのがその本音である。