アイデアとか、一寸した思いつきというものは、とてもひ弱で、生れたと思うとすぐ死んでしまいがちなものである。それは正に、その名のとおり「ひらめき」であり、一瞬ひらめいたと思うと、すぐ永遠の闇の中へ消え去ってしまうのだ。
ここで勧めたいのは、メモする習慣である。何かひらめいたら、すぐそれを書きとめよ。そして、折りにふれて、そのメモを読み返してみよ。いまだ力を得ない人たちに、成功へのチャンスを与えるものは、このアイデアの働きによってなのである。
生れたアイデアは、生き残れるように、すぐ手当てをほどこさなければならない。次には、そのアイデアをもととした思索の発展が必要である。そのアイデアを現実に適合させるための障害は何か。
またそれを乗り越えるにはどうしたらよいのか?それらについての研究や、他人の助言も必要となってくる。アイデアが生まれ、成長し、形をととのえてきて、しかも世に受け入れられるためには一つの条件がある。それは、世のために利益がある、ということだ。
そのアイデアで、世の人はどんな得をするのだろうか?今までになく便利なものか?今までになく安価なものか?今までになく人にある種の喜びを与えるものか?それらについて考え、それはおよそ大衆のために役立ち、庶民のために奉仕するものであって欲しいものだ。
「少々お高いが、永い間のご使用を考えれば結局はお安くつきます」などという言訳がましい註釈のつくものは、たいていの場合、大きな発展は望めないものである。大衆に奉仕するアイデアこそ、成長の暁には、その人を大成功に導くものであると知れ。