肩書きをひけらかす、という行為は、ツキを自分から追いやる行為である。これはなぜかというと、他人の自己重要感を押し下げようという行為だからである。必要もないのに、自分の所属する有名会社の名前や、地位について、すぐ喋るのは、相手に対し、自己の優越性を暗に誇示しようとする態度となる。
この行為を受けた人々は当然、かすかながら不快感を覚える。そして、このような肩書きをとかくひけらかす人は、陰に陽に自己優越の印象を相手に与えて行こうとするので、その不快感はだんだんと増大して行くのである。
こうして、人心はこの人から次第に遠ざかる。奇妙なことに、この種の人々は、歯の浮くような、下手くそなお世辞をよく並べたてるものだが、これは、人心の離れて行くことに気づき、それをつなぎ止めようとして、無意識の内にとる行動なのである。
しかし、これをやった後で、またまた、自己優越の印象を他人に与えようと、無意識的行動をとるので、もとのもくあみという結果になってしまう。この人は、自己の心内に巣くう自己劣等意識にまず気づかなくてはならない。
なぜならこの人は、その劣等意識の苦しさに堪えかねて、そのような優越的行動に出るからである。自らの劣等意識を自ら発見し、これを解消しさえすれば、自己優越確認の行為を他人の面前でとろうとしなくて済むようになるであろう。