「礼儀とサービス」を活用するものに、ツキは訪れる

炭焼きの安いリプステーキで評判のステーキ屋が六本木にあり、以前、よくそこへ私は人をつれて行ったものである。しかし、ある時を期として、私はぴたりと行くのを止めてしまった。その理由は新しく来たマネジャーの態度にあった。その店は安くて狭いので、いつも客が立てこんでいて、入口で並んで待っている客も少なくなかった。

それで、このマネジャーは、より多くの客をとりたいために、今テーブルに居る客に、何となく早く出て行けがしのそぶりをしたのである。まだ少し残っているアイスクリームの皿をさっさとさげたり、足音あらく床を鳴らして歩いたり、食器類をガシャガシャと音を立てて置き、従業員もそれにならっていた。

バーゲンには通常、礼儀やサービスは無視されがちである。しかし、このような心構えでは、人より抜きん出た成功者になることは出来ない。特に前記のステーキの場合は特に大切な点だが、ステーキとは庶民にとってはぜいたく品である。すなわち、たとえそのステーキは安いとはいっても、庶民はささやかなぜいたくを楽しみに来たのである。

その人々に対して、早く出て行けがしの態度を示したらとうなるであろうか?いうまでもなく、それらの人々の自己重要感は大きく引き下げられるのである。かくして人心は去り、ツキもそれと共に去る。それはこのマネジャーから去るのであるが、同時に、この店のオーナーからも、そのツキを奪うことになる。

礼儀やサービスは、おカネなどと違って、無限に誰もが有している資本である。しかし、その資本を知らずして出しおしみしている人間は意外とこの世には多いのである。この無限の資本を活用せよ。そうすれは、ツキは自然に自分の方へむいてくるのだ。

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