ツキを自分に呼び込むための第一条件は「相手は今なにを考えているか?」という配慮、すなわち代理想像ができるかどうかにかかってくる。自分を相手の立場に置き代えてみる。そして、自分がこのような言動をすれば、相手はどんな感情を抱くだろうか?ということを想像してみるのである。
これのできない人間は、この世ではまず成功者たり得ないであろうし、かりに非常な幸運のもとに一時的な成功を収め得たとしても、いずれは他人の裏切りなどによって足元をすくわれ、その成功を失ってしまうのがオチであろう。
とはいえ、この代理想像の意味は、決して、他人の顔色ばかりをうかがって、戦戦恐恐としているということではない。また、いかに代理想像力に秀れているからといって、我々は読心術を行なえる魔術師ではないし、またそうなる必要もない。
これは、チェスや将棋などの指し方に似ている。指し始めから中盤までは、定跡にかなった指し方をしていることが多いものである。このような間は、あまり思考エネルギーを費やせなくてもよい。そして、何かチラと疑念が湧くような指し方が盤上に現れたら、そこでやや長考し、危険を見出し、それを回避するよう努めねばならないという。
要は訓練と習慣であろう。他人との会話中、そのチラは何となく自分に感じられるものである。そしてそのチラは何によらず、一つの危険信号であると考えて差しつかえない。相手が俄かに声高に喋り始めた時、また逆に沈黙し、言葉少なくなになった時、視線が他の何かに移り始めた時。このような時、調子にのって自分ばかりが話しつづけていると、それは自分のツキを失い、成功への道を閉ざすことにもなりかねない。