ケサランパサランは、その正体そのものが大きな謎に包まれているわけだが、実はその名前自体にも大きな謎がある。まず、この「ケサランパサラン」にも多くの別名があるのだ。「ケセランパセラン」「ケサラパサラ」のように似たものから、「テンサラパサラ」など。また、鉱物性ケサランによく使われる「ヘイサラパサラ」のようなものまである。
「さっぱりわからん」というのを、東北地方のある方言では「ケサランパサラン」と発声するという説は前にも述べたが、本当のところはわからない。
ただ、これまでにケサランのことを扱った雑誌の記事やテレビ番組ではこぞって、その名前の由来を説明するのに、この東北地方の方言説を引き合いに出すのである。
しかし、これまでに東北出身の人で「ああ、それは《サッパリ・ワカラン》ということさ」のように、ケサランの名の由来を語った人とは一度も会ったことがない。
ただ面白いことに、インドネシア出身の知人だけは、その言葉(ケサランパサランという音)に反応を示した。その人によると、インドネシア語には「キサラン」と「パサラン」という言葉があるという。それらは別々の単語だが、いずれも「丸いもの」「回るもの」などを意味しているというのだ。
また、「ケサランパサラン」という名前はどことなく、フランス語やスペイン語の「ケッ」(que)とか「パッ」(pas)などの音とも通じるし、またスペイン語の「ケ・セラ・セラ(que sera sera)」(なるようになるさ)とも似ている。
ちなみに、鉱物性ケサランの「ヘイサラパサラ」は、ポルトガル語起源だという。まさに、「ケスクセ?(フランス語で「これ何?」の意)」「さっぱりわからん」「でも、ケセラセラ(どうでもいいや)」といった感じか…。