それは山を歩いているときに道端に落ちているかもしれないし、あるいはビルの屋上にいるときに空からふわふわと舞い降りてくるかもしれない。それはあなたに幸運をもたらす天からの使者だともいえよう。それを捕まえて大事に育てれば、あなたは幸福行きの切符を手に入れたようなもの。でも、それはなかなか見つからない。なかなか手にも入らない。その名は、誰も知らないのに強烈な存在感を放つ名前、ケサランパサラン…
大事に扱えば、幸また多し!
まずは連想ゲームから始めよう!
これから述べる幾つかのキーワードから、あるものを連想してみてほしい。
1.「白いフワフワ(フサフサ)したもの」
2.「おしろい」
3.「桐の箱」
4.「東北を中心とした伝説上のシロモノ」
5.「毛玉状、もしくは植物の綿毛状のもの」
6.「持っていると、幸福になれるといわれるもの」
もうお解かりであろうか? 2の「おしろい」と言ったところで、すでに解った人はそれに対してかなりの情報通かと思われる。
さて、これらのキーワードが全て合わさって導かれる言葉は、ただひとつ。それが、ケサランパサランである。
最近の若い女性に次のように聞いてみたとする。
「ケサランパサランって、知ってる?」
すると、
「なに、それ? 知らないわ」
あるいは、
「もちろん、知ってるわよ。化粧品を扱っている一メーカーの名前でしょう」
といった、どちらかの答えが返ってくることが予想される。
ところが、すこし年配の人に同じ質問をしてみると、次のような答えも返ってくる。
「ああ、知ってるよ。あのオシロイを喰うってヤツでしょ」
「うん、聞いたことあるな。桐の箱の中で飼育すると分裂して増えるという、あのヘンテコリンな生物のことだろう」
「ああ、知ってる、知ってる。だいぶ前に流行ったあれだろう。なんでも、東北地方の伝説に出てくる、成長して大きくなるという毛むくじゃらの妖怪・・・ いや、妖精だっけ?」
しかし、このような答えを聞かされても、そのモノを知らない人にとっては、やはり何のことやら、さっぱりわからないだろう。「オシロイを喰って、桐の箱の中で分裂増殖する生物だって? いったい何だ、それは?」ということにもなる。
そのモノをよく知っている人は、次のようにも答えるだろう。「持ち主に幸運をもたらすという不思議な毛玉のことさ」と。
あなたも近くにいる人に聞いてほしい。「ケサランパサランって、知ってますか?」と。それに対する答えは、以上に挙げたもののどれかに当てはまると思う。
たまに「スナックの名前で見た」とか「レストランの名前にそんなのがあった」などと答える人とも出会うかもしれない。実際、その名前を持つお店も多いからだ。
※本書で新しく書き下ろしている部分は、「ケサランパサラン」、もしくはその略の「ケサラン」という表記に統一しているが、引用している過去の記事やレポート中では、執筆者により「ケサラン・パサラン」「ケセラン・パセラン」「ケセランパサラン」「ケサパサ」など、いろいろな表記がある。
しかしどれも同じものを指していることをあらかじめお断りしておきたい。すなわち、それぞれの記事やレポートで記されている、名前の表記に従った。