30分後に自分が知ることになるもの(見るもの聞くこと、すなわち今はまだ知り得ないこと)、それが30分前に自分があらかじめ直感で得た情報と一致した場合、誰でもちょっとした驚きを覚えるだろう。
その驚きの感情・感覚の波が、30分前の自分の脳へと投射することで、30分後の何らかの情報もある程度は伝播する、といった時空のループ構造もあり得るもしれない。
つまり、近未来の自分が体験することになる感情や感覚的な印象は、時空を超えて過去の自分へと無意識的に伝播しているということはないだろうか。
前回までにそうした可能性について述べてきた。
案外、それは古くから虫の知らせや予知夢と言われてきたものの正体でもあるのかもしれない。
さらに、デジャヴという、あの不思議な体験もまた、この可能性を示唆している。
デジャヴとは、初めて体験するにもかかわらず、すでに見た覚え、すでにやった覚えのする不思議な感情のことで、日本語では「既視感」(つまり既に視た感じ)ともいう。
デジャヴのメカニズムはまだ解明されていない。
だが、「あ、これは前にも体験したことがあるな」という、あの一種独特な感情は、ひとつは夢の情景が思い起こされたときの感覚とも似ている。
そして、多くの人がデジャヴの体験をもつことを考えると、我々は誰もがみな、一度は夢の中で未来を先取りした体験をしているのかもしれない。
夢の中での未来体験が実際の世界での体験とダブった時に、その不思議な感情が沸き起こるというわけだ。
となると、我々は常に健忘症のような状態で、せっかくの未来夢を思い出せないまま日常を過ごしていることになる。
それでも時たま、夢で見た未来のヴィジョンが脳裏をかすめることがあり、それこそがデジャヴと呼ばれる不思議な感情の源泉となっているのだろう。
そして、デジャヴを人為的に起こさせたもの、それが自己テレパシー通信に他ならない。