前回までに、「夢」が古今東西、人類を陰ながら支え、文明を今ある姿に変えてきたということについて述べてきた。
えっ、それはいささか大袈裟だろうって?いやいや、そんなことはない。
それでは今回も、「文明の推進力」となった夢の不思議な話と、そして前回に引き続いて、「夢による発明成功物語」の、そのほんの一部を紹介していこう。
まずは、古代エジプトでの夢見の話から…。
夢のもつ創造性や予言性は、古代エジプト時代から注目されていた。
エジプトのスフィンクスの足もとには「夢の碑文」というものが刻まれている。
それによると、トトメス四世がまだ子供の頃、昼寝をしているとスフィンクスが出てくる夢を見たという。
夢の中で、スフィンクスは「砂の中から自分を掘り起こしてくれたなら、お前はファラオ(王)になれるだろう」というお告げを残したのだ。
彼はその夢の通りに、スフィンクスを砂漠の中に発見し、さらにその後はエジプト新王国第十八期王朝のファラオ、トトメス四世となったのである。
よく「夢は未来をつくる」というが、「歴史は夢の中でつくられる」とも言えよう。
人生の半分は眠りの世界。
そこで夢として垣間見たものが、人類の大いなる財産ともなったのだ。
そして、夢によるミシンやベンゼン環の発明・発見の話を前に紹介したように、近代の世界においても、人類が見る「夢」の内的指導力はもっぱら健在であるようだ。
ベンゼン環の構造を解明したことが、化学の世界を大きく飛躍させたように、「元素の周期律」という法則を発見し、それによる周期律表を手に入れたことは、まさに現代科学の根底を確立することに繋がったといえよう。
実は、その「元素の周期律表」を作成した化学者のメンデレーエフも、そのヒントを夢の中から得ていたといわれるのだ。
なんと、夢の中で元素の周期律を垣間見て、その原型をつくったというのだから、凄すぎる。