脳の研究はもっとも進んだ医学分野のひとつでありながら、未解明の部分を多く残している分野でもあります。
宇宙を研究する天文学や地球のことを研究する地質学も最先端技術を持ちながら未解明部分が多いことに似ていますが、考えてみれば現在の学問、これだけ情報量を持ちながら肝心な部分が分かっていないという、本当に文明社会なのかと疑いたくなるような現実ですね。
スタンリー・キューブリックとアーサー・C・クラークが「2001年宇宙の旅」で類人猿の放り投げた骨が一瞬にして宇宙船に変わる場面がまさしく現在を象徴しているとも言えます。
ちょっと話は逸れましたが、要するに記憶の種類や記憶が脳内でどのように部位へ伝達されるのかは分かってきたけれど、どういった形でどこに収納されているのか、未だ、不明なのです。
記憶は脳内の海馬に収まっている、というのは一般的な解説で、実際のところ、そんな大雑把ではなく海馬傍回、海馬、脳級、視床、視床下部などが複雑に絡んでいて、さらに感情的な記憶は扁桃体という脳内部位に記憶回路があるのではないか、と言われています。
つまり現在の記憶に関する研究は脳の表面上の変化と、記憶のアウトプットによる臨床実験の結果から導かれた途中経過でしかないのです。